





★本サイトのコンセプト
TOPページ冒頭でご説明した通り、このサイトは日本の伝統芸能や祭禮を受け継ぎ、後世に残していく事を第一義としていますが、それと同時に表裏一体の理由が他にもあります。
【技術と史料の継承】
このサイトを作ったもう一つの訳、それが
「技術と史料の継承」
です。お気づきの方もいらっしゃると思いますが、作り手の職人さんの数は需要と比例して減少し、色々なものを作ることが年々困難になってきています。最大のポイントは職人さんの高齢化と後継者不足問題です。
職人さんの高齢化はそのまま身体能力の低下となり作れる数が限られていきます。同様に繊細な技術を駆使する事も困難になっていく事で、技術は絶え作れる物の種類が減ってきました。更に技術習得に時間を要する上、需要が少ない事と相まって収入面でも見習いの内は厳しいと言う事が重なって、若い職人さんがなかなか増えないと言う問題は、他の伝統産業と何ら変わりません。
後継者問題は別の弊害ももたらしています。それは持てる技術の発信周知の不足、つまりどんなものを作れるのかを発信できないのです。現代社会において何かを探す時に電話帳を見て探す人はほぼいないでしょう。スマホやタブレット、PCを使ってインターネットを利用し検索をしても、ホームページを持たない工房は、消費者の目に留まることはほぼ無いのです。
※“ほぼ”と言うのは、弊社を始め一部の業者がSNS等を通じ、完成した物を公開している場合「こんなものを作れるところ、作れる人がいるんだ!」と言ったケースが存在するからです。
しかしこのままでは、国内で伝統文化に関わる様々なものを作れる職人、業者の減少に歯止めが掛りません。結果として一部の伝統行事が本来の姿で継続が出来なくなる事すら、考えられる時代なのです。弊社とその関係会社では、それを少しでも防ぐ為に、地域を問わず、職人さん達を横に繋げて、色々な技術と物を残すことで、日本を元気にしたいのです。
実際に、弊社はこれまで和装小物と染めものを中心に製造卸を営んできましたが、この数年弊社の提携工場やメーカーの営業の方から
「こんなものを作っていませんでしたか?」
「あれを扱っている工場と御取引ありませんか?」
と言った問合せが来ることが急に増えてきました。自社のお客様は注文したいのに地元に業者がいないと言うのです。お客様がこれまで発注していた業者が廃業、或いは倒産してしまったので「一緒に頼めないか?」と聞かれて困っているのです。コロナが蔓延したことや需要そのものが減ったことで仕事が減り、地元で扱っていた業者がいなくなった為このような事態になっています。そうです、同じ業界の業者ですらどこに発注したらよいか分からず、探しあぐねてしまうのです。
歌舞伎や能等、知名度の高く予算も十分あるものだけでは、職人と技術は守り切れません。地方で行われる様々な伝統舞踊、民俗舞踊や各種の祭禮で行われる舞踊は、子供の頃や青春時代の思い出の1ページですが、それを次の世代に受け継ぐ事は産業界にとってもとても大切なことなのです。
子供の頃、山車を引いたり、おこづかいを握りしめて夜店を見て回ったりした、あの楽しさを自分の子供や孫にも教えてあげたい。若い頃に御神輿を担ぎ流した汗の爽快さをこれからの若者にも味合わせてあげたい。彼氏彼女と見た、地元の民族舞踊を受け継いで欲しい。その為に守るべき職人さんとその持てる技術を無くしてはいけないと、私たちは考えています。
【伝統芸能と祭禮の現状】
これまで祭禮は、それぞれの地元で受け継がれて現在に至っていますが、近年は新型コロナウィルス感染症がここにも影を落とし始めました。
地元と言っても仕事の為に都会に出ている若い世代が多い為、時期が近づいてくると他地域で仕事をしている人達が、週末に実家に帰り準備をしてまた自宅に戻る、と言う事を数週間から数ヶ月間繰り返して、やっと開催出来ていたと言う祭禮は多々あります。ところが感染拡大を抑える為に
「今は帰ってくるな」
と言われるようになり、お祭を延期せざるを得ないケースが相当数出ています。その結果、次のような問題が発生しました。
1、道具類を管理、維持できない
お祭を行わないので寄付を募る事が出来ず、色々な維持費が捻出できない事が大きな要因になっています。御神輿や山車を保管しておく倉庫費用が捻出できない、道具類を維持修理、新調をしたくても予算が足りないなど、お祭の開催の有無を問わず必要な費用が重くのしかかっているのです。過疎化が進んで自治会の規模が縮小し、更に資金調達は困難になっています。
2、頼めるお店がなくなった
お祭に欠かせない、半纏や浴衣、手ぬぐいなどは、本来地元の呉服屋さん、染物屋さんが請け負って製作していました。しかしただでさえ和服を着る機会が少ないところに、コロナ禍で更に減った為呉服屋さんが廃業したり、そこから注文を貰っていた染物屋さんも廃業したりと、作ってもらおうにも頼めるお店がないのです。ネットや口コミなどを通じて弊社にご依頼を頂く方も、昔は地元で頼んでいたがお店が閉店してしまったからと言うお話を、多くされています。
弊社で祭半纏を作って頂いているある地域では、それまで主催していた商店街が諸般の事情から、お祭の主催を降りられてしまいました。そこで地元の有志が声をあげ、町会や近隣の方を説得して寄付を募って祭禮の費用を捻出。更に子供さん達に受け継いでもらおうと、大人たちが持っている半纏と同デザインで、費用を抑える為少しだけ生地の質を落とした貸半纏を作って、お祭を楽しんでもらうための工夫をして、お祭の再開にこぎつけました。子供さん達はとても喜んで大いに盛り上がったそうです。まだまだ工夫次第で色々な行事を維持、活性化して受け継いでいく事は出来ると言う、証明の一つでしょう。